政府は20年来、少子化対策に力を注ぐが、昨年の出生数は初めて100万人を割り込み、改善の兆しは見られない。『損する結婚 儲かる離婚』(新潮新書)の著者・藤沢数希氏は少子化に歯止めをかける鍵は「婚外子」だと喝破する。
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少子化問題の本質は、私は結婚制度の欠陥にあると見ている。
その最たるものが「婚姻費用」だ。婚姻費用とは、民法で規定される「夫婦は相手の生活を自分と同じレベルで維持する義務」を果たすための費用のこと。要するに専業主婦なら、夫の稼いだお金の半分は主婦のものということ。男女平等なので、主夫の場合は稼いでいる奥さんは旦那にお金を払わないといけない。
男性は生活費を負担しても妻に家事や育児をやってもらえるメリットがあるが、女性の場合は、日本男子にそれをあまり期待できない。
OECD調べ(2014年)によると、日本の「男性の家事や育児などの無償労働時間」は1日62分で、OECD26か国中、韓国の45分に次いで短い。
そうであるなら、女性が自分より稼ぎのいい男性と結婚したいと考えるのは当然だ。しかし現実は、高収入の女性ほど自分より稼ぎのいい男性を見つけにくい。年齢・収入別に婚姻率を調べた統計では、女性の収入が25~29歳で600万円、30~34歳で700万円を超えると一気に婚姻率が下がっている。
加えて、「子供を産むには結婚しなければいけない」とする社会規範もいまだに根強い。バリバリ働く女性ほど、「数少ない高収入の男性と結婚する」か「誰とも結婚せず子供も産まない」かの二者択一を強いられるのである。女性の社会進出が目覚ましい中、日本で少子化が進むのは自明だ。
◆日本は婚外子が異常に少ない
少子化対策のためには、結婚か否かの二者択一ではなく、中間のバラエティを増やすことが必要だ。欧米の婚外子率は概ね50%前後であり、籍を入れずに同棲しながら子供を育てるのが一般化している。
日本でも事実婚のカップルが育児をしたり、お金持ちの男性が複数の女性との間に子供をもうける事実上の一夫多妻的な家庭があっていいと思う。今でこそ日本の婚外子率はわずか2%に過ぎないが、かつて昭和初期頃まで妾という立場は世間にありふれた存在だった。
現在でも、法律婚による正妻のほかに事実婚による愛人がいて、その子供を養育するケースはあるし、それを妻が認めている場合もある。婚外子は法律上も嫡出子と何ら差別されない。片親家庭には児童扶養手当が加算されたり、保育園も優先的に入れたりするなど、不利どころか、むしろ有利だ。
すると、婚外子という選択を阻む壁は、「子供を産むには結婚しなければいけない」という社会規範=思い込みだけということになる。
事実婚や不倫だとしても、女性がもっと自由に、好きな男性の子供を産めるようになればいい。また、富裕層が、多くの異性から求められて子供が増えるのであれば、少子化改善とともに、富の再分配にもなり、一石二鳥である。
【PROFILE】藤沢数希●理論物理学研究者、外資系金融機関を経て、作家。ブログ「金融日記」管理人。メルマガ「週刊金融日記」発行中。主な著書に『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』(ダイヤモンド社刊)、『「反原発」の不都合な真実』(新潮新書)、『ぼくは愛を証明しようと思う。』(幻冬舎刊)などがある。
※SAPIO2017年5月号